女の隙間、男の作為













岡野麻依子
30歳目前の正真正銘のアラウンドサーティ。

家族構成は父母弟の4名。
能天気さだけが取り得の円満家族である。
(ついでにあたしにはまったく懐かないぶち猫が一匹。彼女はもはや岡野家の主だ)

職業は機械商社の営業事務。
(しかもとびきり優秀!)
来月からはフロリダ勤務。

新生活には大いに不安。
(主に食生活が不安。あたしはグルメなタイプなのに!)

海外に住むなんて学生のときのホームステイ以来だし、そもそも英語力だって妖しい。
でもなんとなるという楽観的思考の持ち主でもある。

友人関係は良好。
親友は年内には女の子の天使を出産予定。
(今からお祝いのリスト作成に余念がない)

悩みはアルコール分解能力の低下と目元の隈とくすみ。
ついでに気になりだしたほうれい線の存在。
基礎化粧品にかける費用は年々右肩上がりだ。

髪型は肩までのストレート。
色は面倒だから染めていない。
これから海外生活だから尚更染めるつもりもない。
クセもないストレートの髪は自慢にするほど綺麗でもないけど、隠したくなるほど恥ずかしくもない。


彼氏は…
とりあえずめんどくさくて手の掛かるのがひとりと答えておきましょうか。

それでも大酒飲みで五月蝿くて可愛くなくて素直じゃない岡野麻依子という女を誰よりも理解する貴重な存在であることは認めている。
ついでに見た目も文句なし。仕事も有能。
あ、これ自慢じゃないです。

「これがあたしなの。受け入れるか放っておくかはあんたが決めて」

「そうやって答えがわかってて聞くところ、カノっぽくて可愛いよなー」

ね?
変な男でしょう。
(決して惚気ではございません。悪しからず)

自分が主役の送別会を抜け出して、二人で飲みなおしながらビールの味がする色気のないキスを交わす。

ロマンやトキメキとは程遠いし依存や馴れ合いを多分に含んだ関係だけれども、それでも敢えてこれを“正解”だと呼ぶことにしたい。

来月には時差-14時間の関係に突入だけれど不安に思うのは止めた。
あたしにはあたしの仕事があるし、ヤツにはヤツの仕事がそれこそ山盛りにある。

そしてその一部を共有し続けることができる。

それで十分だと思うことでたぶん小さな幸せも増えるだろう。


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