女の隙間、男の作為

「寝てる女の子を抱く趣味はないけど、甲斐甲斐しく介抱したしダメになったシャツの分くらいはお返しを貰おうと思って」

それがどんなお返しだったかなんて想像もしたくないけれど聞かずにはいられない。
いったいコイツはナニをどこまでしたっていうの。
無意識に肌蹴た胸元を掻き合わせ身体を固くする。

「本当に覚えてないんだ」

“でも俺はバッチリ覚えてるよ。マイコの右胸の黒子のこと”

「このセクハラ野郎!!!」

傍にあったエアコンのリモコンを反射的に掴んで投げたが見事にかわされるどころかキャッチされてしまった。
口惜しい口惜しいむかつく!

嫁入り前の女の乳を寝ている間に見るっていったいどんな騎士道精神だ。

「…見ただけ?」

「な、わけないでしょ」

「あんたね!」

「先っぽだけだってー」

「死ね!!!!」

今度は枕を投げつける。
相手に届くことなく床に沈んだけどもあたしのテンションはそれ以上に沈没していた。
岡野麻依子とあろうものが寝ている間に男に好き勝手されようとは!
乳を吸われようとは!

「舐めたらマイコはすんごい気持ちよさそうに声出すし、キスしたら応えるし、起きたのかと思えばやっぱりぐうぐう寝てるし。途中で止めた俺は勇者だと思うよ」

全然記憶なんてないのにソレを聞いただけで胸の先が固くなるのがわかる。
記憶にない舌と歯の感触が蘇るようで、身震いがした。
それが寒さの所為じゃないことが分かっているから尚自己嫌悪が広がっていく。
覚えていないことに不安を覚えながらも覚えていないことを口惜しいと思うなんてどうかしてる。あたしってばいつのに性欲の権化になったのよ。

「キスって…」

「普通あんなやらしい声出されたら、男はその口も欲しいと思うものでしょ」

「意識の無い相手に盛らないでよ!」

よくもまぁ四度も吐いた女とキスしようなんて思うなと別の意味で感心しながらも今度は咥内にあるはずのない舌の記憶が蘇りそうになる。
< 24 / 146 >

この作品をシェア

pagetop