シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「とりあえず紫堂玲。得点は0、時間が34:56にENTERキーを押せ」


カタカタカタ…。


「あのさ…得点0でその時間にENTERキー押して、もしもそれが不正解だったら…その間に出る犬を叩けず、即マイナス扱いで…骨、失うよね」


固い玲くんの声。


「誰の骨!!!?」


思わず叫べば、


「ワンコ。骨があと1つ」


小猿くんが答えた。


「煌、あんた動けるの!!? 大丈夫なの!!!?」

「は!!!? 何で俺!!? ワンコの話だろ!!?」

「だから聞いてるんじゃない!!!」

「俺の何処がワンコだよ!!?」


がっと立ち上がった煌に驚いたあたしは、思わず椅子から転げ落ちそうになり、煌が咄嗟にあたしの腕を掴んだ。


「あ、危ないじゃない!!!

煌、"お座り"!!!」


「悪ぃ」


素直なワンコは椅子に座る。


………。


なんでワンコの自覚ないんだろ…。



カタカタカタ…。


久遠が立ち上がり、玲くんの左隣について画面を見る。

その間に立とうとしたら、久遠に左側に立たせられた。


つまり久遠を挟んで、あたしと玲くん。


玲くんが遠い…。


しゅんと項垂れたその左隣に煌が立った。

寂しい心が、オレンジ色に染まって温かくなる。

煌という奴はそういう奴だ。


馬鹿で盛ってばかりの変態犬だけど、傍に居るだけでほっと出来る稀少な存在だ。


やっぱり煌は元気が一番だ。

今回、やけにいつもより無駄に元気そうなのが、少し引っかかるけれど…。

S.S.Aの時みたいにしょげていないのならそれでいい。

ワンコは元気で馬鹿がいい。


…温かくて。


あたしは煌の服の裾を掴んで、鼻を啜った。


「あれ…煌が白シャツなんて珍しいね」

「これ、久遠の。俺、此処来た時裸だったからさ」

「裸!!! あんた何処をキャンキャン走り回ってきたの!!! まさか…」

「うわ、何、一体何!!? おい、芹霞!!!」


煌から香水がするかどうか、首元に顔を寄せてくんくん臭いを嗅いでいたら、久遠に襟首掴まれた。


「せり、動くな」


久遠が冷たい目をしてこっちを睨んでいて、あたしは大人しくすることにした。


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