シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「あの表紙の方は何だろうね。漢字だらけの筆文字。江戸とか鎌倉しか昔の時代の書物?」
あたしの問いに、玲くんが答えてくれた。
「あれは…『抱朴子』って書いてあったね。中国の文献だ」
「じゃああの禿げたお爺ちゃんの絵は?」
玲くんがあたしに反応してくれるのが嬉しくて、次々に聞いてしまう。
「あれは多分、パラケルスス…ん…?」
玲くんの目が細められて。
「"下のものは上のもののごとく、上のものは下のもののごとし"…この意味も…」
下のモノは上のモノのようで、上のモノは下のモノのよう…?
「なぞなぞ? 煌、判る?」
「ひっくり返る何かか?」
「間違いない。"錬金術"だ」
答えが出ないあたし達に、玲くんが鋭く言い放つ。
「中国の錬金術について書かれたと言われている『抱朴子』、有名な錬金術師パラケルスス、そして…『下のもの~』のくだり。…これは、伝説的な錬金術師ヘルメスがエメラルド板に刻んだもの。
ギリシャ神話のヘルメス神、エジプト神話のトート神と、この錬金術師ヘルメスを合わせて、"3倍偉大なヘルメス"…この3は、久遠が解いた計算問題にもあったよね」
「錬金術…が何で?」
首捻る煌。
「レグは、錬金術でもしてたのか? まあ…魔術師だったもんな。しっかし…本当に金なんて作れるのかよ?」
「どうだろうね。だけど。錬金術が…成功すれば、"約束の地(カナン)"存続の理由にはなるな」
玲くんは薄く笑う。
「基本五皇は元老院の傍につくのが常なのに…白皇は違う。
幾ら"天使の飼育場"として藤姫のバックアップがあって、都度招集に応じて"約束の地(カナン)"から外界に赴いたとしても、元老院と離れて生活をしているのに、白皇の肩書きを維持出来るのは、不思議だと思っていた。
だけど、もしもレグが金を生み出せるとなれば…錬成場となる"約束の地(カナン)"管理の大義名分はあるな。
大義名分か…レグの切り札か。何せ元老院が飛びつきそうな餌だ。
錬金術が目指すのは賢者の石。それで非金属を金にし、人間を不老不死にさせられる。
――ああ!!!
『黒き腐敗、白き再生を経て銀となり、赤の神気で黄は輝き、不死となる』…これは、錬金術における、金になるまでの色の過程そのものじゃないか!!!」
…らしい。
またもや不老不死。
久遠は何も言わなかった。
だけどちらりと向けたのは、机の上の紙の山で。
そして切なそうに視線を外した。