シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「そう。すごい爆発したような鳴き声。長かったよね、紫堂。それが終わったら、シーンと静まり返って、不気味なこと不気味なこと」
「野犬は?」
「朝には死骸になっていたみたいだよ」
「死骸…。その得体の知れないものは?」
「さあ? 結局は判らない」
そう、判らなかったんだ。
結局…。
「何だそれは」
「判らないから七不思議。ああ、7つ目がないから六不思議か。これを氷皇が調べろなんていうんだ、無茶だよな。不可解だから、七不思議なのに」
ケラケラと遠坂は笑ったが、久遠は険しい顔をして考え込んでいる。
「氷皇…が、七不思議?」
五皇が言ったことに、引っ掛かりを感じているのか。
"ごおうのりこう"
そこに繋げているのだろうか。
「あの男は超現実主義者だ。その男が胡散臭い迷信染みた話に興味を示すというのなら、それが限りなく現実的なものだということだ。
その中に、今回、この紫堂櫂が落ちぶれたことに関連するものはないのか?」
いちいち、ひっかかる物言いだ。
「落ちぶれた直接的な起因ではないけれど、ボク達はそれに関連したものに遭遇してるよ。そういう意味では、現実的だけれど…事象は限りなく夢想的だったね。"ぴぎゃーーー"を含め、黄色い蝶が目を抉るとか…イチル、」
「黄色い蝶?」
久遠は目を細めた。
「それは…お前のトコの犬が、狩り続けているという…痣を作るに至らしめたその"黄色い蝶"のことか?」
「あ、ああ…。でもボクが居た時は、血色のバラの痣(ブラッディローズ)なんて関係なかったんだよ。ボク達が"約束の地(カナン)"に来たら、突然それが付加されていたんだ。神崎と師匠だけしか見えない黄色い蝶だった」
「せりと紫堂玲だけが視える・・・黄色い蝶…ね」
再び久遠は考え始めたようだ。