シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「そう。すごい爆発したような鳴き声。長かったよね、紫堂。それが終わったら、シーンと静まり返って、不気味なこと不気味なこと」


「野犬は?」


「朝には死骸になっていたみたいだよ」


「死骸…。その得体の知れないものは?」


「さあ? 結局は判らない」


そう、判らなかったんだ。

結局…。


「何だそれは」


「判らないから七不思議。ああ、7つ目がないから六不思議か。これを氷皇が調べろなんていうんだ、無茶だよな。不可解だから、七不思議なのに」


ケラケラと遠坂は笑ったが、久遠は険しい顔をして考え込んでいる。


「氷皇…が、七不思議?」


五皇が言ったことに、引っ掛かりを感じているのか。


"ごおうのりこう"


そこに繋げているのだろうか。


「あの男は超現実主義者だ。その男が胡散臭い迷信染みた話に興味を示すというのなら、それが限りなく現実的なものだということだ。

その中に、今回、この紫堂櫂が落ちぶれたことに関連するものはないのか?」


いちいち、ひっかかる物言いだ。


「落ちぶれた直接的な起因ではないけれど、ボク達はそれに関連したものに遭遇してるよ。そういう意味では、現実的だけれど…事象は限りなく夢想的だったね。"ぴぎゃーーー"を含め、黄色い蝶が目を抉るとか…イチル、」


「黄色い蝶?」


久遠は目を細めた。


「それは…お前のトコの犬が、狩り続けているという…痣を作るに至らしめたその"黄色い蝶"のことか?」


「あ、ああ…。でもボクが居た時は、血色のバラの痣(ブラッディローズ)なんて関係なかったんだよ。ボク達が"約束の地(カナン)"に来たら、突然それが付加されていたんだ。神崎と師匠だけしか見えない黄色い蝶だった」


「せりと紫堂玲だけが視える・・・黄色い蝶…ね」


再び久遠は考え始めたようだ。


< 419 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop