シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「紫堂櫂。お前は…黄色い蝶は、何だと理由付けている?」
突然俺に言われたが…俺だって結論は出ていない。
首を横に振ってみた。
「ああ、お前に聞く方が馬鹿だったな」
なんだか…本当にむかつかせる奴だ、この男。
先刻からぱっぱと瞳の色を忙しく切り替えして、言うのはそんな雑言か!!
「黄色い蝶は…何を狙っているんだ?」
そんな俺を無視して、久遠は遠坂に質問ばかり。
何でこいつはこう自分勝手なモノの進め方しかできないんだ?
「黄色い蝶が狙うのは…少女達の目」
遠坂は即答した。
「七不思議上では、少女達の願いを叶える夢の国へと使者たる蝶、"サンドリオン"。だけど実際は…そうした夢見る少女達の目を抉る、殺戮の蝶」
「サンドリオン…シンデレラ、夢の国…か。少女限定…ね」
「あ、例外もいるけどね。ボクの兄貴。今頃症状落ち着いて、義眼…なってるかなあ。ちゃんと無事に入院してくれてるかなあ」
そういえば…榊の動向は一切気にしていなかった。
こいつも辛いだろうけれど…それでも俺達の傍で頑張ってくれていた。
それには感謝したいと思う。
「何でお前の兄だけが、例外だ?」
「うーん、それだけが謎なんだ。だけど実際は神崎が狙われたのを庇ったみたいだし」
「せりを? ということは、お前の兄には見えたのか?」
「かどうか、詳しい状況は判らない。何せ傍には黄色い外套能面男がいたっていうし」
瑠璃色の瞳が訝しげな細められる。
「七不思議にはないんだな、"黄衣の王"は。そして如月煌が狩っているのも黄色い蝶。しかし"黄衣の王"は存在していない」
どくん。
何か…ひっかかった。
なんだろう。