シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「確かにきっかけはウチの言葉や。しかし結果的に…こうなること、全て判っていながら、朱やんは飛び込んだ。それしか方法がなかったやさかいな。
朱やんがいなければ、同じことを紫茉はんがすることになる。朱やんは…自分の身体で紫茉はんを救っとる…そう思えばこそ、あいつは満足なんや。
そうしとってくれや」
聖の言葉の最後は、苛立ったような掠れを感じた。
「決して――
朱貴を忌むんじゃない」
標準語で"朱貴"と呼んだのは、聖という男の剥き出しの心なのか。
そこには…おちゃらけた聖の姿はなく、まるで別人のような…翳りを落とした男が居た。
「そういう愛もあるんやと、覚えとってや」
そして直ぐに口調を戻した聖は、その顔を完璧に払拭して、またおちゃらけたようにふにゃふにゃと笑った。
自己犠牲、なんだろう。
きっと朱貴は見返りは求めていない。
愛されようとは思っていない。
自分だけが愛している。
ただそれだけが彼の誇り。
愚かだとか、汚いだとか…そんな感情は浮かばない。
それが朱貴の愛の形だというのなら、なんて崇高なのか。
不覚にも私の唇は、小刻みに震えてしまった。
煌は、翠の目を覆い続けながら、じっとそんな朱貴を見ている。
「辛えよな…」
そんな呟きが聞こえた。
「さ、紫茉はんの力が大分朱やんに流れ込み…抜けてきたようやわ。見てみぃ、踊りが止ってきたわ。朱やんが身体であの場を抑えている今の内に、頼むで?」
私は頷き――
穴から飛び降りた。