シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
そして彼女は、指を鳴らし…待ち兼ねていたような全裸の男から差し出された、ナイフを手に取った。
イケナイ。
私の中で警鐘が鳴る。
ゆっくりと、ゆっくりと…彼女は、場に横たわっている七瀬紫茉に近付く。
慌ててそれを弾こうとした私に、再び電撃の壁が行く手を遮った。
結界…。
結界がこれ以上…魔方陣の内部に踏み込むことを拒むのか。
そして視界に…裸の人間達が溢れ、七瀬紫茉が見えなくなる。
人と人の間から、何とか覗き見えた光景。
ナイフが…七瀬紫茉の首元から、胸元に滑り落ちていて。
駄目だ。
このままだと彼女は!!!
私は、天井から顔を出す煌に合図を送った。
攪乱させろ。
鼻腔に拡がる麝香。
生々しい動物の匂い。
それらが――焦って大きく息を吸った私の鼻腔一杯に、拡がってきて。
くらくらした。
何だ?
どうしたんだ?
目の前の光景がぼんやり見えてきて、私は頬を思い切り叩いた。
それでも視界はぼやけて。
足が…不可解にもがくがくしてきて。
息が…あがる。
心臓が…煩い。
喉が無性に渇く。
ああ、何だ、これは!!!