ショコラ~愛することが出来ない女~
「康子さんは、まだ心が女ですよね。仕草も服装も皆きちんとしていて。
自分が女だって意識してる。
例えば俺の妻は、子供を産んでからそこがおざなりになりました。
出かけるのに、服装もさほど気にしない。
太ったといいながら、食欲を押させようともしない。
女を意識しなくなっているから、こっちも女に見えなくなるんです」
はっきり言いきった彼の口に、右の掌を軽くぶつける。
「ぶはっ」
「褒めてるつもりかも知れないけど、他の女と比べられても嬉しくないわ。
奥様は奥様でしょう。私とは関係ない。そうやって比べて好きだって言われたんなら願い下げだわ」
「……康子さん」
呆けた彼の顔は、一瞬泣きそうに歪んだかと思うと、今度は笑いだした。
「ちょ、なに?」
「あはははは。いや、ホント。
敵わないってか。……はあ」
「何よ」
大笑いが落ち着いた後、彼の手が布団を持ちあげて私の体を隠してくれる。