ショコラ~愛することが出来ない女~


 結局、2部屋の小さなボロアパートから私たちの生活は始まった。

暮らしは決して楽ではなかった。

隆二くんは才能があるのに、融通が利かないからだ。

色んなホテルに勤めながらも、一年もたたないうちにケンカして飛び出してきてしまうのでは、経済的に安定する訳がない。


「いくら美味しいケーキが作れたってダメよ。
隆二くんは忍耐を覚えなさい。
先輩の言うことには耳を傾けるのは、社会人の常識でしょ」

「俺はこれにだけは手を抜きたくない。
あんな機械での作業の監視をするためにパティシエになったんじゃない。あんな店で働けるか」

「それはまだ隆二くんが下っ端だからでしょ。上の方になれば、ちゃんと手作りでその人しかつくれないものを作ってるじゃないの」

「それまで我慢しろって言うのか」


ケーキの事になったら、すぐ興奮してしまう人だった。

そういうところが好きではあったけど、それでも説教臭く人生訓をたれてしまったのは、私が年上だったからなのだろう。

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