ショコラ~愛することが出来ない女~
小さな不満を抱えたまま、それでも数年が過ぎる。
詩子が生まれて、私たちは二人でその成長に夢中になった。
そうして、詩子がおしゃべりをするようになった頃、不意に私の中に変な使命感が湧きあがってきた。
この子は、私たちを見て育つんだ。
だから見本になるような行動をしなきゃいけない。
今の隆二くんみたいな、不安定な父親の姿を見せてはいけない。
思い立ってしまったら、それは私の頭の中にこびりついてしまって消えなくなった。
私は焦って、いつもの調子ですぐに言葉にした。
「詩子の為に、ちゃんと働いて。お願い」
「……」
その言葉は彼の中に浸透していったのだろう。
その後勤めたホテルは長かった。