ショコラ~愛することが出来ない女~
「しっかりしろよ、康子さん。
普通の勤め人が、夜まで家に帰らないのは当たり前のことだ。
熱中症って事は倒れたのは昼間だろう。
定時で帰ってきたって間に合わない。
仕方なかったんだ」
「でも」
「申し訳ないと思うなら、自分の足でちゃんと立って。
葬式だってちゃんと出してあげないと。喪主は康子さんだろ?」
「……うん」
叱られたのは意外だった。
昔から、隆二くんを叱るのは私の役目で、上下関係はそれで固定しているような気がしていたから。
私を表に立たせながらも、彼は裏ではそれは親身になってくれた。
葬儀屋との交渉なんかも一緒に参加してくれて。
その夜、一晩傍にいて欲しいという私の願いを、彼はあっさり受け入れた。
詩子も連れて来て、一緒に家に泊まってくれて。
そして、夜中には私の部屋にもぐりこんできた。
抗う気なんてなかった。
むしろ望んでいたから。
ずっと意地を張っていたけれど、他の男の人と付き合ったこともあったけど、隆二くん以上に好きになることなんて出来なかったから。