愛の花ひらり
社長秘書の仕事って主婦なんですか?
要が再び社長室へと入ると、敦はデスクの上の山のように積み重ねられている書類に目を通している最中であった。
「何かご用でしょうか?」
要が敦のいるデスクの前に姿勢よく立ち言葉を掛けると、彼は書類に向けていた視線を要の方に向けてきた。
「この怪我、どうしてくれるんだよ?」
「知りません。先に手を出してきたのは社長じゃありませんか?」
敦の非難の声に要はフイッと顔を逸らす。
もう社長秘書という役職を解任されても構わないとも思っていたのだが、いきなり敦の手が要の前に伸びて来た為、嫌々その手の方に顔の向きを戻した。
敦の掌の上に乗っている物は、要の役職や名前がコピーされた『名刺』であった。
「これからよろしくな」
「えっ? 私を辞めさせたいんじゃないんですか?」
要が名刺に目を向けたまま言うと、敦は椅子から立ち上がって要の片方の手を掴むと、その名刺の入った透明アクリルの箱を彼女の手に押し付けた。
「ぎゃっ!」
自分の手を掴んでいる敦の手を振り払おうとしたが、男の力というものはこんなにも強いものなのだろうか? 振り払う事ができない。
突然の触れ合いに困惑している要の顔に自分の顔を近付けた敦がニヤリと笑った。
「誰が辞めさせるって言ったんだよ? お前が勝手にそう思っているのかもしれないが、俺はそんな気は更々ないぜ」
敦がフンッと鼻を鳴らして掴んでいた要の手を乱暴に離すと、再び椅子に腰を下ろしていた。
「名刺は取引先に自分の事を知ってもらう、大事な身分証明書みたいなものだ。有効的に使えよ」
敦に名刺の重要性の説明を受けた要は、自分の掌の上にある名刺をジッと見つめた。
「身分証明書……」
各社員達が持つ名刺は、社外で自分達の事をよく知ってもらう為に使用するもの。初めて自分の名刺を目の前にした要のその手にはずっしりとした重みを感じていた時、背後のドアが静かに開いて、秘書室から優子が姿を現した。
「何かご用でしょうか?」
要が敦のいるデスクの前に姿勢よく立ち言葉を掛けると、彼は書類に向けていた視線を要の方に向けてきた。
「この怪我、どうしてくれるんだよ?」
「知りません。先に手を出してきたのは社長じゃありませんか?」
敦の非難の声に要はフイッと顔を逸らす。
もう社長秘書という役職を解任されても構わないとも思っていたのだが、いきなり敦の手が要の前に伸びて来た為、嫌々その手の方に顔の向きを戻した。
敦の掌の上に乗っている物は、要の役職や名前がコピーされた『名刺』であった。
「これからよろしくな」
「えっ? 私を辞めさせたいんじゃないんですか?」
要が名刺に目を向けたまま言うと、敦は椅子から立ち上がって要の片方の手を掴むと、その名刺の入った透明アクリルの箱を彼女の手に押し付けた。
「ぎゃっ!」
自分の手を掴んでいる敦の手を振り払おうとしたが、男の力というものはこんなにも強いものなのだろうか? 振り払う事ができない。
突然の触れ合いに困惑している要の顔に自分の顔を近付けた敦がニヤリと笑った。
「誰が辞めさせるって言ったんだよ? お前が勝手にそう思っているのかもしれないが、俺はそんな気は更々ないぜ」
敦がフンッと鼻を鳴らして掴んでいた要の手を乱暴に離すと、再び椅子に腰を下ろしていた。
「名刺は取引先に自分の事を知ってもらう、大事な身分証明書みたいなものだ。有効的に使えよ」
敦に名刺の重要性の説明を受けた要は、自分の掌の上にある名刺をジッと見つめた。
「身分証明書……」
各社員達が持つ名刺は、社外で自分達の事をよく知ってもらう為に使用するもの。初めて自分の名刺を目の前にした要のその手にはずっしりとした重みを感じていた時、背後のドアが静かに開いて、秘書室から優子が姿を現した。