愛の花ひらり
「あら? やっぱり質問があったようですわね?」
社に戻り、三十五階までエレベーターで昇って来た敦と優子。勤務タイムカードのところを覗き込んだ優子が溜息を吐いた。
「いくら当麻さんをお気に召したからと言って、まさかあそこまでされなくても良かったのではないですか? この私でさえもその領域まではお邪魔した事がございませんよ?」
優子が敦の方に非難めいた表情を浮かばせると、彼は窮屈そうな上のスーツを剥ぎ取るように脱いで優子に荒々しく手渡した。
「ふん! 大手の会社や、政治家達などは皆してもらっている事だよ」
「でも、今までそれだけは、自分の生活に干渉されるから嫌だと仰っていたじゃありませんか? これでは、私の方に全て担われていた仕事を彼女に渡すのが可哀想になります」
今まで何度も秘書は雇ったが、長く続いた者はいなかった。それもそのはず――敦は、それらの新米秘書には殆どの仕事を与えずに、優子ばかりを頼っていたからであった。
自分の父からこの社にいたベテラン秘書でもあったせいか、話しやすく信頼できる人材であった。その反面、新米秘書と言えば、本当に無能な女ばかりであったのを思い出す。
「そういや、この前辞めた秘書は、三日だったよな?」
「社長がないがしろになされるから」
「ふん! 何かあるごとに色目なんか使ってくるのが悪い。俺はああいう女が一番嫌いなタイプなんだ」
敦が社長室のドアを開いた時、優子が澄ました顔でえげつない言葉を投げ掛けてきた。
「お嫌いなタイプでも、身体はお好みで?」
「うっ! 煩い!」
そう言って、開いたドアから社長室の中に目を向けた敦がゴクリと息を呑んだ。
そこには怒りに狂ったように表情を歪ませている要の姿があった。
社に戻り、三十五階までエレベーターで昇って来た敦と優子。勤務タイムカードのところを覗き込んだ優子が溜息を吐いた。
「いくら当麻さんをお気に召したからと言って、まさかあそこまでされなくても良かったのではないですか? この私でさえもその領域まではお邪魔した事がございませんよ?」
優子が敦の方に非難めいた表情を浮かばせると、彼は窮屈そうな上のスーツを剥ぎ取るように脱いで優子に荒々しく手渡した。
「ふん! 大手の会社や、政治家達などは皆してもらっている事だよ」
「でも、今までそれだけは、自分の生活に干渉されるから嫌だと仰っていたじゃありませんか? これでは、私の方に全て担われていた仕事を彼女に渡すのが可哀想になります」
今まで何度も秘書は雇ったが、長く続いた者はいなかった。それもそのはず――敦は、それらの新米秘書には殆どの仕事を与えずに、優子ばかりを頼っていたからであった。
自分の父からこの社にいたベテラン秘書でもあったせいか、話しやすく信頼できる人材であった。その反面、新米秘書と言えば、本当に無能な女ばかりであったのを思い出す。
「そういや、この前辞めた秘書は、三日だったよな?」
「社長がないがしろになされるから」
「ふん! 何かあるごとに色目なんか使ってくるのが悪い。俺はああいう女が一番嫌いなタイプなんだ」
敦が社長室のドアを開いた時、優子が澄ました顔でえげつない言葉を投げ掛けてきた。
「お嫌いなタイプでも、身体はお好みで?」
「うっ! 煩い!」
そう言って、開いたドアから社長室の中に目を向けた敦がゴクリと息を呑んだ。
そこには怒りに狂ったように表情を歪ませている要の姿があった。