愛の花ひらり
「あの、顔色が悪いわ」
「……大丈夫です」
「でも……あまり寝ていないんじゃ……」
「ええ、睡眠時間がほぼないので……」
要が奥歯をぎりっと噛み締めていると、敦が不思議そうに訪ねてきた。
「睡眠時間がないってどういう事だよ? 夜、仕事から家まで真っ直ぐ帰ってんだろ?」
ああ、また余計な事を口走ってしまったと、要は強く唇を噛んだ。
バイトをしているなんて知られたら――
この会社の副業規則では、バイトをしてはいけない事になっている。これを知られてしまえば即クビだとも理解していた要だが、生活の為に今月まではどうしても続けていたかったのだ。
勿論、今月分の給料とバイトの給料を合わせれば、来月からは質素ながらも細々と生活ができるはずと、計画を立てていたのに、今の自分の口から出た言葉によって、その計画が全て崩れ去ろうとしていた。
「おい、何で夜寝てないんだ?」
質問をして欲しくないのに、こういう時に限って勘が鋭い男は嫌だ――要はそう思いながら、小さな声で眠れていない理由を話し始めた。
「お、お前……バイトしてたのか!?」
「はい……」
「社内の副業規則を知っているよな?」
「はい……」
ハーッと溜息を吐いた敦が、社長席に身体を沈み込ませる。
「何でそこまで……」
「生活が苦しいからに決まっているじゃありませんか」
「じゃあ、よくそんな生活であれだけのスキルを取得する事ができたな? あれらを取るにも金が掛かるんだぞ? 借金でもしたのか?」
「いいえ、借金は自分の身を滅ぼすだけですからそのようなところに手は伸ばしません。スキルの取得の費用については、それはそれ用で貯めました」
「ふーん……まっ、計画性はあるって事か」
要が腕時計に視線を向けると、もうすぐコンビニの方のバイトの時間が迫りつつある。
「バイト……ね……」
時間がないのに、下がれとも言わない敦は、少し焦りを見せ始めた要をじっくりと見つめてきた。
「……大丈夫です」
「でも……あまり寝ていないんじゃ……」
「ええ、睡眠時間がほぼないので……」
要が奥歯をぎりっと噛み締めていると、敦が不思議そうに訪ねてきた。
「睡眠時間がないってどういう事だよ? 夜、仕事から家まで真っ直ぐ帰ってんだろ?」
ああ、また余計な事を口走ってしまったと、要は強く唇を噛んだ。
バイトをしているなんて知られたら――
この会社の副業規則では、バイトをしてはいけない事になっている。これを知られてしまえば即クビだとも理解していた要だが、生活の為に今月まではどうしても続けていたかったのだ。
勿論、今月分の給料とバイトの給料を合わせれば、来月からは質素ながらも細々と生活ができるはずと、計画を立てていたのに、今の自分の口から出た言葉によって、その計画が全て崩れ去ろうとしていた。
「おい、何で夜寝てないんだ?」
質問をして欲しくないのに、こういう時に限って勘が鋭い男は嫌だ――要はそう思いながら、小さな声で眠れていない理由を話し始めた。
「お、お前……バイトしてたのか!?」
「はい……」
「社内の副業規則を知っているよな?」
「はい……」
ハーッと溜息を吐いた敦が、社長席に身体を沈み込ませる。
「何でそこまで……」
「生活が苦しいからに決まっているじゃありませんか」
「じゃあ、よくそんな生活であれだけのスキルを取得する事ができたな? あれらを取るにも金が掛かるんだぞ? 借金でもしたのか?」
「いいえ、借金は自分の身を滅ぼすだけですからそのようなところに手は伸ばしません。スキルの取得の費用については、それはそれ用で貯めました」
「ふーん……まっ、計画性はあるって事か」
要が腕時計に視線を向けると、もうすぐコンビニの方のバイトの時間が迫りつつある。
「バイト……ね……」
時間がないのに、下がれとも言わない敦は、少し焦りを見せ始めた要をじっくりと見つめてきた。