愛の花ひらり
「用事は終わりましたか?」
「いいや……」
早くしてくれと願う要に、敦はニッと笑った。
「んじゃ、今のバイトはすぐに辞めて、違うバイトをしろ」
「はい!? 何を言っているのかさっぱり分かりません!」
「違うバイトだよ。まあ、違う言葉で言えば『時間外勤務』だな?」
敦の言葉に優子がパッと顔を輝かせた。
「それは良い妙案ですわ! 当麻さん、時間外勤務はかなりの金額になりますのよ!」
「は、はあ……!?」
「先程の『その他』の仕事は昼以外全て勤務外になります。それに、朝は早いですし、夜は遅い。一か月続けるとバイト料よりもはるかに金額を上回りますわ」
「と、言う訳で、明日からよろしくな! ああ、今からのバイト、もう断っておけよ。夜中まで仕事をされて寝坊されたら困るからな」
敦はそう言うと、要に向かって一つの鍵の付いたキーホルダーと、カードキーをを投げ付けてきた。
一つは敦の家の鍵、もう一つは車の鍵らしいが、要はその二つの中の車の鍵を見て不安になった。
この鍵、どう見ても高級車っぽい――。
だから、一応尋ねる。
「ねえ、この鍵の車は何?」
その言葉に、敦はただ一言。
「ポルシェ……」
その後、要は敦にそのキーホルダーを投げ付けていた――。
結局、要はそのポルシェに乗って自分の家に帰る事になったのだが、自分の家に帰る前に送って行かないといけない男が隣に座っていた。
「ちょっと……明日からって言わなかったっけ?」
「別に今夜からでもいいじゃねぇか。バイト、クビになったんだろ?」
「そ、それはあんたが!」
「俺の会社、副業は禁止なんだよなぁ」
「くううぅっ!」
今まで人と接する機会を持たなかった要にとって、この車の中の狭い空間はとても心臓に悪い。が、敦は口笛まで吹いて、自分の家の道をあーだこーだと説明してくる。
ようやく到着した場所は、東京でも高級マンションの立ち並ぶ街並みの中であった。
「んじゃあ、明日から頼むな。部屋は1000だから」
車から降りる時に、家番号を言ってくる敦に、要はフンッと顔を逸らした。
そのような要を見て、敦が苦笑を洩らしながら、
「入社したばかりの新米が社長にそんな態度を見せるなんて、お前、本当に面白いわ。明日から益々楽しみだぜ」
そう言って身体の向きをマンションの方に向けて歩き出して行った。
「な、何が面白いのよ……」
要が敦の後姿をジッと見つめる。
そう言えば、社長の名前、まだ分かんないや。家に帰ってパンフレットを開こう。
前方に向いた要がサイドブレーキをグッと下げる。
「でも……」
ドライブにチェンジした要は、敦の後ろ姿があった方に視線を向けた。
「社長秘書って……主婦みたいな仕事よね……」
「いいや……」
早くしてくれと願う要に、敦はニッと笑った。
「んじゃ、今のバイトはすぐに辞めて、違うバイトをしろ」
「はい!? 何を言っているのかさっぱり分かりません!」
「違うバイトだよ。まあ、違う言葉で言えば『時間外勤務』だな?」
敦の言葉に優子がパッと顔を輝かせた。
「それは良い妙案ですわ! 当麻さん、時間外勤務はかなりの金額になりますのよ!」
「は、はあ……!?」
「先程の『その他』の仕事は昼以外全て勤務外になります。それに、朝は早いですし、夜は遅い。一か月続けるとバイト料よりもはるかに金額を上回りますわ」
「と、言う訳で、明日からよろしくな! ああ、今からのバイト、もう断っておけよ。夜中まで仕事をされて寝坊されたら困るからな」
敦はそう言うと、要に向かって一つの鍵の付いたキーホルダーと、カードキーをを投げ付けてきた。
一つは敦の家の鍵、もう一つは車の鍵らしいが、要はその二つの中の車の鍵を見て不安になった。
この鍵、どう見ても高級車っぽい――。
だから、一応尋ねる。
「ねえ、この鍵の車は何?」
その言葉に、敦はただ一言。
「ポルシェ……」
その後、要は敦にそのキーホルダーを投げ付けていた――。
結局、要はそのポルシェに乗って自分の家に帰る事になったのだが、自分の家に帰る前に送って行かないといけない男が隣に座っていた。
「ちょっと……明日からって言わなかったっけ?」
「別に今夜からでもいいじゃねぇか。バイト、クビになったんだろ?」
「そ、それはあんたが!」
「俺の会社、副業は禁止なんだよなぁ」
「くううぅっ!」
今まで人と接する機会を持たなかった要にとって、この車の中の狭い空間はとても心臓に悪い。が、敦は口笛まで吹いて、自分の家の道をあーだこーだと説明してくる。
ようやく到着した場所は、東京でも高級マンションの立ち並ぶ街並みの中であった。
「んじゃあ、明日から頼むな。部屋は1000だから」
車から降りる時に、家番号を言ってくる敦に、要はフンッと顔を逸らした。
そのような要を見て、敦が苦笑を洩らしながら、
「入社したばかりの新米が社長にそんな態度を見せるなんて、お前、本当に面白いわ。明日から益々楽しみだぜ」
そう言って身体の向きをマンションの方に向けて歩き出して行った。
「な、何が面白いのよ……」
要が敦の後姿をジッと見つめる。
そう言えば、社長の名前、まだ分かんないや。家に帰ってパンフレットを開こう。
前方に向いた要がサイドブレーキをグッと下げる。
「でも……」
ドライブにチェンジした要は、敦の後ろ姿があった方に視線を向けた。
「社長秘書って……主婦みたいな仕事よね……」