咲き舞う華は刻に散る
「川綵、ちっと来い」
「何だ――、わっ!」
土方に近寄るなり、美桜里は彼に引き寄せられる。
息がかかる程二人の顔は近付いている。
それは皆の角度から見たら、口づけているように見える程だ。
「何すん――、んぐっ!」
抗議しようとした美桜里の口は土方に押さえられた。
「静かにしろ。今から俺が言う事をよく聞け」
美桜里は小さく頷く。
土方は美桜里の口から手を離し、耳に口を寄せた。
「今からお前は一足先に屯所に戻って、用意をしろ」
「…分かった」
「あと俺から離れる時、一発俺を殴って、怒りながら出てけ。良いな?」
美桜里が頷くと、土方は彼女の手を離す。
それを合図に美桜里は彼の頬を思い切り平手打ちした。
綺麗な破裂音が室内に響く。