咲き舞う華は刻に散る


「あの人は本当は優しいなんどす!死んだら、あきまへんのや!」



原田から聞いた話だが、梅は元々菱屋の主人の妾だった。



しかし、芹沢に手籠めにされたのをきっかけに彼の妾になったらしい。



凌辱された相手を何故、それまで慕うのか美桜里には理解出来ない。



「く、くく…っ」



美桜里は急に喉の奥で笑った。



顔を下げていた梅は顔を上げ、怪訝そうに彼女を見つめて来る。



それでも、構わず、美桜里は笑っていた。



「何がおかしいんどすか…?」



「いや、人間とは情が深い生き物だと思って…」



美桜里は笑いが収まったのか息を吐き、雨でへばり付く前髪をかき上げた。



藍色の髪から雫が滴り、彼女の白い頬を伝う。





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