咲き舞う華は刻に散る


「何が言いた――」



「この私が人間のそんなくだらない情で流されると思うか?」



美桜里の緋い瞳が梅の瞳を捕らえた。



焔のように緋いのに、宿る光は冷淡だ。



そんな美桜里の瞳を見た梅は肩をビクリと揺らす。



「人間の情なんて、私には関係ない」



そう冷たく言い放つと、美桜里は梅の横を通り、屯所の門をくぐる。



「貴女だって、人間じゃないんどすか!?」



後ろから梅の悲鳴に似た叫び声がしたが、美桜里は聞こえないふりをし、屋敷の中に入った。



さすがに床を濡らしてはいけないと思い、足袋を玄関で脱ぎ、廊下を突き進んだ。






< 160 / 615 >

この作品をシェア

pagetop