描かれた夏風
 私の絵を認めてくれる人がいる。

 それは言葉にできないくらい嬉しいことだった。

(そう……だったんだよね)

 私が絵を描き続けているのは、私の絵を好きだと言ってくれる人のためだ。

「友絵ちゃんは選ばれたんだよ。他の誰でもなくて。だからもっと自信を持てばいいよ」

「はいっ!」

 智先輩の言葉に、私は勢いよく頷いた。

 私の絵を好きだと言ってくれる人のために、私は絵を描き続けよう。

 予鈴が鳴って、智先輩は普通科の教室棟に帰っていった。

 学校で過ごす時間の中で、一番大好きな数十分の終わり。

 とっても名残惜しいけれど、明日もまた会えるのだ。

 明日の明日も、その次の日も、きっと――。

 このときの私は、智先輩と過ごす時がいつまでも続くことを疑っていなかったのだった。

 幸せな時間は長く続かないからこそ幸せなのだと、誰かが言っていたのに。
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