描かれた夏風

意外な縁

 女子集団は捨て台詞を残す余裕もなく、逃げるように去って行った。

 それを見送ったアスカ先輩は、怒り半分呆れ半分といった顔で智先輩に向き直る。

「そこのあんた、いい加減にしときなさいよ……? 周りが見えてないにもほどがあるわっ!」

「ごめんごめん、ついカッとなってさ。アスカちゃんに止めてもらえて助かったよー」

 脳天から怒りの煙を吹き出すアスカ先輩に、智先輩はいつも通りの微笑みを向けた。

 私はこれまで溜まっていた空気を大きく吐き出す。

(よかった。元通りの先輩だ……)

 智先輩が見せた呑気な表情に、私は安心感を覚えた。

「それはそうと友絵ちゃん、大丈夫だった?」

「はい、智先輩のおかげで助かりました!」

 心配そうに尋ねてきたアスカ先輩に、私は満面の笑みを見せる。

「そう、ならよかったわ。この男のおかげっていうのが気に喰わないけど」

 アスカ先輩が智先輩に刺すような視線を向けた。

 どうやら二人は知り合いらしい。それも相当険悪な仲みたいだ。

「あー、もうこんな時間だ。二人とも暗くならないうちに早く帰った方がいいよー」
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