描かれた夏風

嫉妬心

「お待たせ。――でさ。話ってのは友絵ちゃんのことなんだけど」

 門から出てきたアスカが、口早に話し始めた。

「三年生の先輩が一緒にお弁当食べてくれてるそうなの。それってあんたのこと?」

「……そうだけど」

 アスカは一体、何を言いたいのだろうか。

 思案をめぐらせてみても明確には判らない。

 アスカは西口友絵と仲がいいから、やはり情報交換は行われているのだろう。

「――あの子あんたのこと好き、みたい、かもしれない」

「曖昧だねー」

 一瞬ドキリとしたが、何事もなかったかのように受け流した。

「こんな奴やめとけって友絵ちゃんに言っていい?」

「それはありがた迷惑かな」

 アスカはしばらく口をつぐんだ後で、思い切ったように言いだす。

「ねえ、あんた、何を考えてんの?」

「別に何も」

 即答したら、嫌そうな顔に睨まれた。

 アスカはやっぱり自分を嫌っているようだ。

「別にあんたが何考えようと自由だけど、泣かせたら許さないからね」

「……嫉妬してるんだ?」

 質問を切り返してごまかす。

 誰が嫉妬なんか、とアスカに殴られかけた。
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