描かれた夏風
深緑の季節

作品制作

「お帰り、友絵。難波先生から呼び出しなんて珍しいね。何を言われたのー?」

「えっと……今回の絵の出来は非常に良かった。文化祭の代表もあり得るかもしれないから頑張れ。だって」

 自慢みたいで照れくさいが、たった今言われたことをそのまま告げる。

 私は椅子を引いて笑顔で友達グループの中に入った。

 夏も近づくこの時期、私はようやくこのクラスに馴染み始めていた。

 智先輩との一件があって以来、嫌がらせの中心だった女子集団が私に寄りつかなくなったのだ。

 それにアスカ先輩も、何かあった時には相談に乗ってくれる。

 いろいろな人から私の絵が認められて、今では一年A組のホープと呼ばれるほどになっていた。

 私は恐いくらい順風満帆な高校生活を過ごせている。

「うっわ、羨ましい」

「さっすが。目指せ野間野先輩だね!」

 口々に祝福してくれる友人たちに、私は柔らかい笑顔で応じた。

「アスカ先輩は憧れだよ。追いつくなんて、恐れ多くて言えない」

「またまた、この子は謙虚だねえ」

「でもさ、野間野先輩、最近不調なんでしょ? 文化祭の代表、もしかしたらってこともあるかもよ」
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