描かれた夏風
 友達の一人が声をひそめて言う。

 ドキリとした。

 文化祭では舞台の中央に優勝な三作品が展示されて、その三人が秋の芸術祭に出ることになる。

 このままでは野間野アスカは代表の座を取れないのではないか、と密やかに噂されていた。

「なんでも、絵が描けなくなったとか……まあでもどうせ単なる噂でしょ」

「代表に一番相応しいのが野間野先輩だもの。第一、あの野間野悟朗の娘よ。芸術祭に出さないと苦情が出るわ」

 友達はアスカ先輩に関する無責任な噂で盛り上がる。

 主席で入学した優秀なアスカ先輩に、一、二年生のほとんどが憧れていた。

 その後、みんなは文化祭の代表予想で盛り上がる。

 まず間違いないと思われるのが野間野アスカだ。

 三年生の有力候補が数人いて、さらに可能性のある二年生が二、三人。

 そして、超大穴が私。一年生の西口友絵だ。

 野間野アスカ含め有力候補たちを差し置いて春の優秀賞を取ったのだから、文化祭の代表も有り得ないわけではない。

「まあ、でも、他人の目なんか気にせずに最大限の力を振り絞るだけだよね」
< 75 / 134 >

この作品をシェア

pagetop