描かれた夏風
 長く伸びた二人の影は、とても仲が良さそうだった。

「……はあ……」

 いけないと思いながらも、ついため息が出てしまう。

 真由は私なんかよりも明るい。

 誰にでも話を合わせることができる。

 それに何より、自分から積極的に動いていく子だ。

 ――私……。真由と比べて、私は。

 なんでだろう。

 心の中が重たい。

 全身が鉛になったみたいだ。

 見上げた空は見事な夕焼け。

 名残惜しそうに燃え盛る、今日という一日。

 赤の上に薄紫の絵の具がにじんで。

 やがて、ポツリと白い水滴が落ちる。

 小さくきらめいた一番星は、まるで涙のようだと思った。

「最近元気ないねえ。疲れているんじゃないの。少しは休んだら?」

「大丈夫だよ。それに大丈夫じゃなかったとしても休んでる暇なんてないしね」

 気がつけば文化祭は一週間後だ。

 私と真由は二人並んで教室を目指す。

 芸術科の生徒たちは、締め切りを前にして修羅場を迎えていた。

 ここ数日寝ていないという生徒も珍しくない。

 もっとも私は二週間近く絵ばかりの日々を送ってきたから、もう慣れてしまっていた。
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