描かれた夏風

揺れ動く心

 智先輩は真由に気づき、のんびりとした笑顔を浮かべた。

 二言三言会話を交わした後で、不意に真由が私の方を指差す。

 智先輩は私と目が合うやいなや、少し笑顔を曇らせた。

「友絵、こっちこっち」

「え? あ、うん……」

 真由に手招きされて、私は戸惑いがちに歩を進める。

 智先輩はどことなく困ったような顔をしていた。

 真由は苦い雰囲気にも気づかず、明るく紹介をしてくれた。

「こちら、普通科三年の都築先輩。んで、この子が私の友達の芸術科一年、西口友絵です」

 何と答えたらいいか迷ったから、智先輩に合わせることにする。

「西口さん。よろしくね」

「は、はい。どうも、よろしくお願いします」

 初対面さながらの挨拶は、どこか滑稽だった。

 どうやら予想以上に私は嫌われてしまっているらしい。

 ここまで知らないふりをされるとは思っていなかった。

 ――まずい。

 下手したら、涙が出てしまいそうだ。

「友絵って、アスカ先輩と同じ中学なんだってね。どうして教えてくれなかったの?」

「あ……ごめん」

 ぼんやりと会話を聞き流しながら、真由に目をやる。
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