ルージュはキスのあとで
「何を話していたんだ?」
「……内緒です」
クスクスと笑って話しの内容を言おうとしない私に、長谷部さんは最初こそムッツリと不機嫌な顔をしていたが、なにか思いついたかのように笑みを浮かべる。
今までの流れ的に、長谷部さんがにっこりとほほ笑むとろくなことがないということは学習済みの私は、その笑みを見て恐怖に慄いた。
「ま……いいさ。そんなこと身体に聞けばいいことだしな」
「ってか! なんですか。この手は!」
長谷部さんが、私の肩を引き寄せたのだ。
それにいち早く逃げた私を見て、長谷部さんはちょっと不機嫌そうだ。
いや、ちょっと待て! 長谷部さんってば。
段階を踏むとか、なんとか……さっき進くんに電話する前に言っていませんでしたっけ?
まだまだボディータッチの段階までには、到達していないと思うのですけど!
「心と心が繋がったあとは、身体と身体だろう」
「なに当たり前! って顔しているんですか!」
あまりに真剣な顔つきで長谷部さんが言うから、ものすごく焦る。
なんですか、これは。
なにかのバツゲームでしょうか!?
逃げようとする私の手首を掴んで、長谷部さんはそのままソファーに私を押し倒した。
数センチという距離に、長谷部さんの顔がある。
あまりの展開の速さに追いついていけない私の頭と心。
「初心者のお前のために、ゆっくり可愛がってやるから……観念しろ」
「だ、だから!!」
なんかちょっと長谷部さんってば! キャラ変わっているし!
もしかして、兄弟揃って二重人格!? 猫かぶり!?
抗議しようとする私の唇は……長谷部さんの強引なキスで封じられてしまった。
柔らかい感触と、舌のざらつき……一気に甘い痺れが私を襲う。
息苦しくなって口を開けば、待っていましたとばかりに口内に侵入してくる長谷部さん。
激しく、それでいて甘く。
長谷部さんになされるがまま……だ。
やっと解放された唇から発せられた言葉は、私の心を解きほぐしていく。
「ほら、言っちまえ。俺が好きだって」
「……は、長谷部さん?」
息が荒れている私を見て、満足そうにクスリと余裕の笑みを浮かべる長谷部さん。
それが、なんだか悔しくて。
私は、見よう見まねで……先ほどの深いキスを強引に長谷部さんにしてみた。
が、やっぱり初心者。上級者のマネごとなんて危険なこと、やってはいけなかったみたいだ。
最初こそは主導権を私に委ねていた長谷部さんだったのだが、物足りなくなったのか気がつけば長谷部さんに主導権が移ってしまっていた。
名残惜しそうにキスをするのをやめた長谷部さんは、優しく瞳を細めた。