それでも君を



お揃いのマグカップでコーヒーを飲みながらテレビを見てて、あーでもないこーでもないと他愛のない話をしながら楽しそうに笑ってる。


ああ、これは二年前の私たちだ。


現実から目を反らし続けて、彼しか見えてなかったあの頃。

好きなんて言葉じゃ薄っぺらい。
愛してるなんてありきたりすぎる。
もっと重くて深い言葉がほしい。



車のブレーキで目が覚めた。
ミラー越しに運転手さんと目が合った。


「何かあったのかい?」

運転手さんの言ってる意味が分からずに黙っていると運転手は目元を指さした。

自分の目元を触ると涙で濡れていて驚いた。



「ちょっと嫌な夢みちゃって。」

適当に濁しているとちょっと家に着いた。



タクシーを降りるとまた涙が溢れてきた。


ねぇヤスくん、本当は嫌だよ。

本当はヤスくんと別れたくない。
もう一度ヤスくんとキスしたい。
ヤスくんと一緒に寝たいよ。


こんなにも愛してるのにそれを自分から手放すなんてそんなこと本当に私に出来るの?




ごめんナオ、約束守れる気しなくなってきちゃったよ。




「ヤスくん……っ」



小さく放ったそれは私にしか聞こえないくらいで鈍く光って消えた気がした。






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