それでも君を
鍵をあけて部屋に入ると慣れていたはずの淋しさがまた暴れだす。
真っ暗闇の部屋がそれに拍手をかけた。
また泣きそうになったから急いで顔を洗いに行った。
ぼうっとするから思い出すんだ。
何かして気を紛らせていれば思い出さなくて済む。
そういえば今朝は少し寝坊したから洗いものを残したままだった。
コップやお皿を洗い食器棚になおすとき運悪く目に入ってしまった。
あまり使わない食器がしまってあるところを昨日友達が来ていたから、今日はたまたま開けたのが間違いだった。
夢にも出て来たマグカップ。
捨てれずに奥のほうに隠したんだった。
気が付けば手にとっていた。
青いほうがヤスくんので赤いのが私。
最初で最後のデートでヤスくんが買ってくれたマグカップ。
普通マグカップを使うのは朝なんだろうけど私たちは朝、一緒にコーヒーを飲むことは一度もなかった。
夕食を食べ終えてテレビを見ながらコーヒーを飲むのは、やっぱり少しおかしいのかな。