それでも君を
明日の朝、本当なら初めて二人であのマグカップでコーヒー飲めたのかな。
その光景はとても簡単に想像出来た。
それが嬉しいような悲しいような。
ピピピと鳴る音で我に返る。
携帯を手にとるとディスプレイには“サキ先輩”と表示されていた。
胸が一気にざわついた。
でも無視するのも気がひけるから通話ボタンを押した。
「――もしもし」
《もしもしユリ?いま大丈夫?》
いつもより少し高いサキ先輩の声。
それを聞くのはいつもテンションの高いときだった。
「大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
《靖志がね、急遽こっちに帰ってくることになったの!》
嬉しそうな先輩の話を聞きながら、よかったですねなんて答える自分に大きな嫌悪感を抱いた。