それでも君を


「いつ帰ってくるんですか?」


自分で自分に驚いた。こんな趣味の悪い質問するなんて。

明々後日と先輩が答えると彼は本当に嘘をついていたんだと少し嬉しくなった。
そんなことを嬉しく感じる自分が本当に汚い人間に思えた。

憧れの人を騙してまで私は彼を選んでいたのだ。このことを知ったらサキ先輩はどうなるんだろう。



「はやく明々後日になるといいですね。
じゃあ明日もはやいんで失礼します。おやすみなさい。」


電話を切ると一気に悲しくなった。
なんで彼は彼女のものなんだろう。
どうして私のものにはならないんだろう。
彼と並んで朝にコーヒーを飲むことは容易に想像出来たのに、二人が揃いの指輪をつけているのは全く想像出来なかった。
それはきっと夜中の空に太陽が浮かぶくらい非現実的なことなのだ。





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