それでも君を
もう一度携帯を手にとり電話をかけた。
《――もしもし》
「……っ、」
「もしもしユリちゃん?どうしたん?」
私が助けを求めたのはナオだった。
私が泣いて電話を寄越したらほうっておけないナオの優しさを利用したのだ。
ますますずるい女だな、私。
案の定ナオはすぐ行くからと言って電話を切った。
ガチャリとドアが開く音が聞こえたのは電話を切ってからものの10分後だった。
「ユリちゃん!」
肩で息をしながら現れたナオは髪の毛が濡れていていつもより色っぽかった。
「ナオ……」
ナオの顔を見たらさらに涙が溢れてきた。
「もうなんで泣いてるん。
会社出たときは笑ってたやん。」
呆れたように笑っているナオをみてホッとした。
ナオの肩に顔をうずめると彼はやっぱり右手を頭に、左手を背中にまわして受け入れてくれた。
そうしてくれるだけで私の中の黒いものがスッと消えていく感覚さえおぼえた。
心配で髪乾かさんと来てんでと言うナオにはきっと一生頭があがらないなぁなんて思った。