それでも君を
それからもナオはうんうんと時々相槌をうって静かに私の話を聞いてくれた。
ナオに抱きしめられながらぼんやりとヤスくんのこと思い出した。
だけどそんなに悲しくはならなかった。
この涙はきっと大切な人を傷付けた代償なのだ。寂しがり屋なあの人を突き放した。最後のすがるような瞳。きっとずっと忘れられないだろう。
でもこれで良かったのだ。
彼には愛すべき人がいるし、私にも大切にしなくちゃいけない愛がある。
寂しがるのはもうやめた。
自分で幸せになるんだ。
彼を私が幸せにするんだ。それで笑ってくれたならきっと何も寂しくなんかない。
「――‥ごめん、なんか泣きすぎた。」
ナオから離れると落ち着いた?とティッシュを差し出してくれた。
「うん、ありがと。
あーもーナオには恥ずかしい姿見られすぎてるなー目腫れちゃったよ。」
少しおどけながらキッチンにお茶の準備をしに行く。
「もーそんなん気にせんでいいやん。
俺とユリちゃんの仲やろ?」
「――そうだね。‥‥‥あ、」
どうしたん?とキッチンを覗きにナオが来る。
急須を出そうと棚を開けたときマグカップがまだ残っているの思い出した。
そのお揃いのマグカップを手に取ると、私は迷わず燃えないごみのほうに捨てた。
「いいん?」
「いいの、持ってたって意味ないし。
もう終わったんだもん。」
お茶の用意の続きをしているとナオが後ろから抱きしめてきた。
「――ユリちゃん、ごめんな。」
いつもより低い声でナオが小さくつぶやいた。
「何が?なんでナオが謝るの?」
「俺がユリちゃんに不倫なんてやめやなんて言ったからいまユリちゃん苦しんでるんやろ。俺が何も知らんままやったら今頃ユリちゃんは高橋先輩と仲良くやっててんもんな‥」