それでも君を
「じゃあ私がまた不倫したら?」
「そんなんさせへんよ。
でも、もししたらまたこうやって怒ってユリちゃんの隣にいるだけ。」
ふふっと笑っていまのちょっとクサイななんて笑うナオはいつもより男前に見えた。
「…ナオ、私明日会って来る。
そんでもう終わりにしよって言ってバイバイしてくる。」
覚悟は出来た。
いまの私になら言える。だってこんなに心強い味方がいるんだもん。
「うん、頑張ってな。」
「…ナオ、ありがとうね。」
じゃあ仕事はやく片付けよとナオは私の手をとって立ち上がった。
彼のよりも少しだけ華奢な手は、きっとなんでも元気にしちゃうようなパワーがあると思う。私も繋がれた手に少しだけ力を入れた。
あ、とつぶやいて振り向いたナオは合鍵ちゃんと返してもらってなと言った。
「好きな子の部屋の鍵、他の男が持ってんのはさすがに妬いてまうから。」
前を歩くナオの耳はびっくりするくらい真っ赤で可愛かった。
「はーい。わかった。」
そう返事するとあと少しの仕事に取り掛かった。
パソコンに向かいながら、明日のことを少し考えた。