わたしとあなたのありのまま ‥3‥
「そして、決して忘れてはならないのが、ド素人相手にも全く手を抜かず、熱心に指導してくださった先生の存在です。今日のステージ、先生なしでは絶対に成し遂げられませんでした。

私たち全員をここまで踊れるようにしてくれた人。そしてこんなに素敵なステージを作り上げてくれた人。

紹介します。スタジオ『フリービート』のインストラクター、嵯峨崎(サガサキ)冬以先生です!」



会場中が盛大な拍手で迎えるも、舞台袖から冬以が登場する気配は全くなく。



センターの女子が観客のずっと後ろの方に視線をやり、右腕を真っ直ぐ頭上に伸ばして、

「先生、こっち!」

とマイク越しに叫んだ。



観客全員、一斉に振り返った。もちろん私もナルちゃんも。



冬以は体育館出入り口横の壁にもたれ掛かって立っていた。

照れくさそうに苦笑して、しきりに首を左右に振っている。



あそこからずっと見ていたんだ。


というか、冬以の名字って嵯峨崎なんだね。



「先生来ないと、終わんないよ?」

ちっとも前へ出ようとしない冬以に、センターの女子はそう言って悪戯っぽく笑う。



冬以は渋々といった感じで歩き出した。


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