わたしとあなたのありのまま ‥3‥
左肘と右手首をそれぞれキツく握り締められていて、逃げようにも身動きがとれない。



こうなったら『北風と太陽』の『太陽』作戦だ。



田所の胸に、自分の額をコツンとくっつけた。そしたら田所の両手はいともあっさりスルリと放れ、そのまま私のうなじと腰を優しく包むように支える。


そして、耳の上辺りの髪にそっとキスをくれた。


その甘い感触に身体がフニャンとなったけど、両足を踏ん張って耐える。



いつもの私だったらここで、『あれ? 私、何怒ってたんだっけ?』ってなるけど、今日は違う。



彼女を欲求不満にさせた罪は重い。



「しないって言え」

耳元で、掠れた声が囁く。


不確かな口約束でさえ、こんなにも欲しがるところを見ると、私の『浮気してやる』攻撃は相当効いたみたいだ。


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