わたしとあなたのありのまま ‥3‥
「浮気……」

田所の胸に顔を埋めたまま、口を開いた。



「……するっ!」

叫ぶように続けて、同時に額で田所の胸を思い切り突き飛ばした。


油断していたのか、田所の身体はグラリと後方へ傾き、二人の間に隙間が出来る。その隙にクルリと身を半回転させ、すぐさま駆け出した。



「てめっ……待てって、ほのかっ!」

「待たないっ!」


転がりそうになりながら、私にしてはかなりのハイスピードで階段を下り切った。そうして更に全力疾走。


無我夢中で走り続けること数分、身体の悲鳴が聞こえた気がして立ち止まった。上がった息に肩を大きく上下させながら振り返ってみたけど、田所の姿はどこにもない。


まぁ当然と言えば当然か。



でも結局、田所の気持ちなんてその程度なんだ、と。がっかりしている自分にがっかりして、二重にがっかり。


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