愛を教えて ―背徳の秘書―
「瀬崎……さん」


香織はキスの合間に必死で話しかける。


「ねえ、瀬崎さん。お願い……愛してるって言って。今夜だけでいいから、嘘でもいいから……お願い」


瀬崎は驚いたように唇を離し、


「愛してますよ。僕はあなたが好きです。香織さん、ずっとあなたが欲しかった」


喘ぐように言うと香織のパジャマがわりのスウェットスーツを脱がした。

ショートボブの髪が乱れ、ブラジャーをつけていない豊満なバストが瀬崎の顔の前で揺れる。


(色気のないスウェットにノーブラ、ノーメイクなんて……)


香織は思い出の一夜にするにはいささかお粗末だと悲しくなった。

しかし、瀬崎はそう思わなかったらしい。


「なんて綺麗なバストなんだ。あなたみたいにスタイルのいい女性は見たことがない。グラビアのモデルさんみたいです」


暗がりの中、瀬崎は照れくさそうに香織を賛美した。

それは慣れた口説き文句ではないが、じんわりと心に染み込んで……孤独感に固まった香織の心をとろとろに蕩けさせていく。


「すみません。歳のわりにあまり場数をこなしてなくて……」


身体に触れる指はどこかぎこちない。

それはまるで、本当に待ち切れないほど香織に恋い焦がれていたようなセックスだった。

しかも、香織が性急な彼の動きに声をあげるたび、瀬崎は「すみません」と真面目な顔で謝罪を口にするのだ。


「あ……そうではないんです。なんだか、本当に愛されているみたいで。こんなふうに激しく、夢中になって抱かれたのってはじめてで」

「僕は本気ですよ。でも……すみません。もっと強く動いていいですか?」


どうやら瀬崎は早くクライマックスに達してしまいたいらしい。


「謝らなくていいから、あなたの好きにして……瀬崎さん、激しく抱いて」


折りたたみ式のベッドが壊れそうなほど軋み、香織は瀬崎と一緒に達したくて懸命に腰を動かした。その瞬間、香織は何もかも忘れて声をあげる。

すべてが終わったあと、隣が空き部屋、すぐ下の一階が駐車場でよかったと、心から安堵した香織だった。



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