愛を教えて ―背徳の秘書―
セックスのあと、たいがいの男性はさっさと起き上がり、帰り支度を始める。

それはホテルでも、香織の部屋でも同じことだ。しだいに香織は、自分から先に身体を起こすようになった。


呼吸が落ち着くと、香織はベッドから下りようとした。

だがその身体を、背後から瀬崎に抱き止められる。


「もう少し、余韻を楽しみませんか? 三十代の僕は、そうすぐには復活しませんけど」

「あの……私も三十代です。三十一歳ですけど」

「なんだ、よかった! 僕は三十三歳になります。香織さんは若く見えるので、十年も離れていたらどうしようかと思ってました」


瀬崎は心の底から楽しそうに言う。


「いやだ。お世辞でも言い過ぎですよ。私が二十代前半なわけないじゃないですか」

「そうなんですか? 女性の年齢はよくわかりません。僕の目には、大学生の妹と変わらないように見えて……」

「妹さんにそれを言ったら駄目ですからね。私みたいなオバサンと変わらないなんて」


瀬崎の腕に抱かれながら、香織はうれしくて仕方がなかった。

慣れてないと言いながら、瀬崎は自然な動作で香織に腕枕をして、肩をそっと抱き寄せる。

香織は思わず、


「……もう一度、キスしてほしいな……」


独り言のように呟いていた。

すると瀬崎は、「一度だけなんて言わないでください」そう返しながら、唇を押し当ててきたのだ。


「じゃあ……もっと、もっとキスして」

「いいですよ。何回でも」


どうせ一夜の恋だから、そんな思いが香織を大胆にした。


「私、瀬崎さんが好きです。初めて会ったときから、ずっと好きでした」


すると瀬崎は手を香織の背中に回し、ギュッと抱き締め「よかった。僕もです」そんな優しい言葉をささやいたのだった。



< 167 / 169 >

この作品をシェア

pagetop