愛を教えて ―背徳の秘書―
狭いベッドで抱き合って眠った翌朝――。


「もう、熱も下がったみたいですね」


体温計を確認しながら、香織は瀬崎に微笑みかけた。  

昨日の雨は一滴も残っておらず、清々しい朝の陽射しが窓から射し込んでくる。

香織の心も同じようなものだ。大学時代の初体験より気恥ずかしく、それでいて満たされていた。

こんな朝を毎日迎えられたら……。

そう考えた直後、香織は急いで打ち消した。


(割り切った関係よ。大人の女になるの! 遊べる女だと思われたら、また誘ってもらえるかもしれない)


切なさに胸の奥がズキンと痛んだ。本当にそれでいいのだろうか、と香織の中に疑問が芽生える。


「あの……香織さん、本当にお世話になりました。その、昨夜は血気盛んな高校生のようになってしまって」


瀬崎はこれまでと全く変わらない様子だ。  


「いえ。私もとてもよかった、というか。……楽しめましたから」

「それはよかった。じゃ、またこちらにお邪魔してもいいですか? できれば、外でもお会いしたいと思うんですが」


すぐにうなずこうと思った。


(でも、ダメ。きっとダメ。今でもこんなに苦しいのに、クールな女になんてなれない!)


香織は深呼吸して、ゆっくりと首を振った。





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