不格好な恋愛。~Special Short Novel~
部屋を出ると、身体が勝手に動いているような気がした。
歩いているとさっき部屋に入って来たようなスーツを着た男の人とか、メイド服っぽいドレスを着ている女の人たちが沢山いた。
しかも、その人たちの前を通るたびに「おはようございます」と言われる。
無視するわけにもいかないから返すよね。
朝食が置いてあるという下の階まで行って、スーツを着た男の人に案内されて朝食を食べた。
食べて一言。
なにこの美味しさッ!!!
一人暮らしで質素な生活をしているあたしにとっては有り得ないくらい美味しく感じた。
ご飯を食べていると目の前に飾られているお花の存在に気付く。
「あの、このお花は?」
「このお花ですか?このお花はお嬢様が好きなお花じゃないですか」
「そう……だったね」
どこかで見たことのあるお花だと思えば、昨日学校の帰り道に買ったお花だ。
そう思った瞬間に、この事態はやっぱり魔法使いのせいだと直感で分かった。
「ところでお嬢様。今夜の舞踏会ですが定刻通りに始まるそうです。ご予定通り出席なさるんですよね?」
…舞踏会?出席する予定…なんだ?
舞踏会なんて出たことないんですけどっ…
「え、ええ。もちろん」
「それでは予定通り馬車の手配をしておきます」
「あ、ありがとう」
スーツを着た男の人、執事がどこかに行ってしまった。