囚われの姫
…この4つの塔は北が群を抜くが、他の3つもそれなりの高さを誇っていた。



そして…高さがほとんど同じならば1番煩く鐘の音が届くのは、城の中でもなく、眼下に広がる城下街でもなく、この3つの塔なのだ。



「…相変わらず、ここまで来ると騒音だな……」



塔を登る螺旋階段の途中で鐘の音に遭遇した男は思わず足を止め呟く。


毎日の仕事になっているとはいえ、アルクがこの音に顔をしかめるのはいつものことだ。



彼は自らの纏う騎士のマントに到底似合わないような古びた盆を手に持ち、その上には固そうに乾燥したパンと湯気が出るはずもない冷たく冷えきったスープが乗っていた。



アルクは王の最も信頼された側近であるがゆえに、南の塔の囚われ人に毎朝朝食を届けなければならなかったのだ。




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