囚われの姫


やっとのことで塔の上にある扉に辿り着いたアルクは、そっと盆を階段に置き、控えめにノックする。



「ティアラ様?お目覚めでしょうか?

朝食の用意をお持ちいたしました。」



その声音は、監獄に入れられた者に対してだとは信じ難いほど優しい。


そして…扉にかけられた大きな南京錠を、腰のポケットから取り出した鍵で開ける。




このアルクの丁寧な対応を見たら、きっと彼の主の王は声を荒げるだろう。


本当は投獄者に声をかける必要はなく、ただ南京錠を外し朝食を与えればいいのだけなのだから。



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