囚われの姫
「まあ……!」
ティアラはメルートが取り出したドレスに思わず声を上げた。
シンプルな淡い桃色の柔らかそうな薄い生地がふんわりと広がるスカート。
それとは対照的にキュッとくびれた腰、という作りは最近宮廷や貴族の娘たちの間でのモードだった。
だが、塔の中で侍女の使ったお下がりのドレスしか与えられなかったティアラにモードなど分かるはずもないが…このドレスが高級な物であるに違いないことは理解できた。
「せっかく用意していただいたのに申し訳ないのですが……。
こんな高級なもの…私には……。」
脳裏に蘇るのはセロクの言葉。
汚らわしい瞳に似合う服などないと罵倒された記憶。
スッと陰のさしたティアラに、マクサスは優しく声をかける。
「…ティアラ姫。
我が主の見立てでございます。
センスはいいと結構評判なのですよ。」
「リューン様が……?」
どうして…?と続きそうな言葉にメルートは苦笑して答える。
「リューン様はセロクからあなた様のことを聞き出すと、直ぐさま救出に向かわれて…。
帰って来た時にはティアラ様を腕に抱いておられました。」