家政婦のメイド派遣します!
「御客様…ですから、弊社は家政婦の派遣サービスであってマッサージやデートなどはやっておりません。」

受話器を耳に当てた女性が電話対応をしながら桃子に助けてくださいと視線を投げてくる。

桃子はその女性の近くまで行くと走り書きされている会話の内容に目を走らせた。

『3時間のお掃除コース 内容 映画鑑賞に同行 食事 帰宅後のマッサージ』
……どこにも掃除の文字がない。

桃子は呆れながら眼の前で同じ説明を繰り返すオペレータを見つめた。

小さくメモに電話を代わっても貰うように書いて女性の前に置いた。

メモを確認した彼女はすかさず首を縦に振る。

「お客様、上司がご説明いたしますのでそのままお待ちください。」

電話をいったん保留にして彼女はほっと息をついた。

「すいません……桃子さん。」

すまなさそうに桃子に頭を下げた。

「いいえ、この件はあきらかにお客様が悪いのよ。まあこういう人には理解してもらうのには少し時間がかかるかもしれないけど。」

桃子は安心させるようにニコッと笑って受話器を耳にあてた。

「お待たせしましたお客様。責任者の篠崎です。」
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