ブルーブラック2


「もしもし··ああ!お世話になってます。ええ、いや、そんなことないですよ」


いつもより1トーン高い声で電話をしていたのは智。
事務所のデスクに向かって左手で受話器を持ち、右手には“桜”でなにやらメモを取りながら話をしていた。


「はい。はい··本当ですか?いや、助かります。じゃあ今日、閉店後に店で待ってます」


そういって電話を耳から離すと智の顔に自然と笑みが零れていた。


そしてまた、その様子を見ているのは美咲。

美咲にすると運良く、智にすれば運悪く―――美咲が遅番出勤のために丁度事務所にいたのだ。


遠くから耳を澄まして智の会話を聞いていた美咲は心で思う。


(今日店で誰かと会うのなら神野さんとの約束はなさそうね)


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