ブルーブラック2


「あのぉ」
「はい、いらっしゃいませ」


百合香の事情とは関係なくお客は来店する。

そして百合香もお客が目の前に居ればそのことに集中するのでその時だけは全てを忘れて接客する。


「この告知なんですけど、インクの色が選べるってことですか?」


30代位の女性が百合香にそう聞きながら差している告知とは、近日開催されるオリジナルインクについて記載されているものだった。


「いえ、選べるというよりも、お客様自身でリクエストしていただきそれを目の前で表現して作るという感じです」

「目の前で表現···?」

「具体的な色はなかなか口頭では伝えるのは難しいと思いますので、もしご希望の色がありましたらそれの見本になるような···たとえばこういう雑誌からでも構いませんので見本があればより希望に近い色を作って頂けると思いますよ」


百合香はカウンター脇にあった文具や万年筆の雑誌を手にとって説明した。



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