ブルーブラック2


「・・・・っ・・」


美咲は何も言えなくなって、とうとう百合香から目を逸らして俯いた。
そして勢いよく百合香の横を走り去って廊下へ出る扉の前まで急いだ。

ガチャリとドアノブを半分回したところで智の声が耳に届く。


「生田さん。明日は遅刻しないように」


その言葉に反射的に振り向いてしまうと視界には見透かすような目をした智と百合香が入って、どうしようもなくなってそのまま手を回して廊下に飛び出した。


バンッとエレベーターのボタンを押す。



「何よ・・・何よ。どうせ、私は―――」


“中途半端で何も手にしていない”


美咲は心でそう呟くと誰もいないその場所で、今までの理由なき自信が打ち砕かれて暗い顔をして弱弱しい足取りで帰って行った。


< 308 / 388 >

この作品をシェア

pagetop