ブルーブラック２

＊

「最近早いですね・・」
「迷惑？」
「そんな！・・・う、嬉しいです」


智の白い車に乗り込むと、エンジン音と同じように百合香の胸もドキドキと騒ぐ。

百合香の返答に、ふっ。と笑みを溢して智は百合香の頭に大きな手をぽんっと乗せた。


「――たまに外でご飯でも・・・と言いたい所だけど、今日は直帰でいい？」
「？はい」


何か含んだその言い方に百合香は気になったけれど、智の顔を見るとそれはどうやら悪いことではないらしいとわかったので追求するのを止めた。


百合香は流れる景色を久しぶりにボーっとしたまま眺めていた。
暗闇で点々と光る様々な灯りがなぜだか心地良くて。


「―――生田美咲があんな表情《カオ》するなんて、な」


静かな車内に智の言葉が響いた。
百合香は思わずその名前にパッと顔を智に向けた。


「あれは、百合香が言ったから“効いた”んだろうな」