ブルーブラック2
「え?」
既にマンションの駐車場に入った車内は暗くて表情が良く見えなかった。
でも、微かに智は優しい笑顔を向けていた気がした。
自分が何をしたのかなんて、わからない。
あれでよかったのかどうかも。
ただ、自分の概念を押し付けたにすぎないかもしれない。
自分は文房具が好きで、それを運良く仕事に繋げることが出来て、覚えることもたくさん増えて。
だけどそれを中途半端にしないよう努力して今の自分がある。
美咲にとって、恐らく文房具などどうでもいいだろう。
それでもこれをきっかけに何か感じてくれたのなら―――
そうしたら、今回のことも反省して今後同じような過ちをしないかもしれない。
同じような思いを他の誰かにも、美咲にももうして欲しくない。
だからただ殴って終わりになんてしたくなかった。
「いや・・・本当の百合香は強いって再確認したって話」
智は車を止めると百合香に向き合って目を細めてくしゃっと髪を撫でた。